創業二百余年の老舗の和菓子司の蔵に眠っていた古い木型を、かしこは使用しています。
木型とは、江戸時代に誕生したといわれる、和菓子をつくるために欠かせない道具のひとつです。
魚や花、風物などの図柄を何種類ものノミや彫刻刀で、左右対称、凸凹を逆に彫ることで出来上がります。
彫り終わった木型を二枚に重ね、砂糖や飴などの材料を入れ、それらを抜き出すことで、干菓子が出来上がります。
木型は、主に樹齢百年級の桜の木材に、菓子木型職人がデザインした意匠を刻むことでつくられます。
現在では、木型職人の数も非常に少なくなってしまった上に、木型に最適な樹齢を重ねた桜材の入手も難しくなってしまいました。
かしこは、江戸時代から明治時代にかけて彫られた木型の中から、特に繊細で、美しい意匠を選び、菓子作りに用いました。
百余年前の木型は、それ自体が何とも言いがたい美しい表情をしています。

菓子木型を彫る作業は、とても根気のいる仕事です。
和菓子の伝統を未来に繋ぐためになくてはならない匠の技です。
日本の伝統文化はどれもが匠の技術によって支えられています。
かしこは蔵に眠っていた木型だけでなく、若き匠たちの作品ともコラボレーションしてまいります。